江戸時代に入って戦が少なくなると、これまで武器職人として生計をたてていたものたちが錠前師に転職することが多々あったようです。
江戸時代になるまで海老錠からほとんど進化がなかった日本の鍵ですが、ようやく変化を見せるようになります。
このころ作られた鍵のことを「和錠」といいます。
和錠は板バネ式で四角い形をしており、左右非対称です。
さらに、錠前師たちは裕福な商人や武家たちのリクエストに応えてさまざまに凝った意匠をこの鍵に施すようになります。
すぐれたものを作った職人には藩からほうびを与えられたことも関係し、職人たちは競って腕を上げました。
代表的な和錠は4つあります。
ひとつは阿波錠です。
阿波藩は産業で栄えた藩でしたので錠にもその豊かさが現れる豪華な装飾が施されているものが多かったそうです。
そして土佐藩の土佐錠は刃物の産地でもあったため、刃物に使われる玉鋼を使用して作られました。頑丈で精巧であり、美しさもある装飾が特徴的です。
因幡錠は良質な砂鉄の産地である因幡の錠前です。薄くて軽いのが特徴。
安芸錠は鍵穴の部分が裏表ともに膨らんでいるのが特徴。ひきがえるのお腹のようなかたちをしているため、「どんぴき錠」と呼ばれて親しまれました。